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卓球サーブトスの「ほぼ垂直」はどこまでが許容範囲?

卓球のサーブを打つときには様々なルールがあります。打つまでの動作に関してざっくり挙げただけでも、

  • 投げ上げ前の球は手のひらに乗せる
  • 始動前にいったん静止する(突然打たない)
  • 球を投げ上げるときに回転をかけてはいけない
  • 16cm以上、ほぼ垂直に投げ上げる
  • 投げ上げてから打つまでの球の軌道が隠れてはいけない

などなど。

このうち、よく議論されるのは「球の軌道が隠れて見えない」の部分ですが、今回はそこはさておき、意外と議論されない部分、

「ほぼ垂直」ってどこまで許容される?

これについて見ていきたいと思います。

少し長くなるので、今回いちばんお伝えしたい結論をあらかじめ書いておきます。それは、

ハイトスサーブであれば、投げ上げ地点と打球地点がある程度離れていても違反にはなりにくい

というものです。なぜそうなるのかについて、基本的なルール&その存在意義について確認した後、最近の動向を考慮しながら解説していきます。

ルールブックの確認

ITTFが発行しているルールや規制についてのハンドブックには、以下のように記載されています。

2.6.2

The server shall then project the ball near vertically upwards, without imparting spin, so that it rises at least 16cm after leaving the palm of the free hand and then falls without touching anything before being struck.

ITTF(国際卓球連盟)公式HPのハンドブック https://www.ittf.com/handbook/より抜粋

「垂直に近い上方向」ということで、ほぼ垂直です。数値基準のようなものは見当たりません。

それでは、この「ほぼ垂直」ルールが存在する理由は何でしょうか。理由はいくつか考えられます。

理由①:斜め方向トスにメリットがある

斜めにトスすることによって、以下のようなメリットが考えられます。

トスのスピードを上げられる

同じ高さまでトスを上げる場合、斜め方向に上げることで球のスピードが若干上がります。そして球によりスピードがあれば、その分、インパクト時に回転などに変換できるエネルギー量が増えます。

下図は極端な例です。直感的に分かりやすくするために、極端に描いています。

トスアングルの違い

両方とも高さは同じ16cmですが、どちらの球にスピードがあるかと言われれば、【A2】ですよね。

斜め成分が増えれば増えるほど、球のスピードも上がります。ストリートファイターのダルシム有利です。伸びる手を生かしたヨガ・サーブの回転量は、なかなかヤバそうです。

打球時の目線を簡単に近づけられる

一般的なフォアハンドサービスの場合、人体構造上、トスを上げるときの腕は身体からやや離れていた方が投げ上げやすく、打球するときは目線に近い位置でとらえた方が安定します。

つまりトスをやや手前側に(身体に向かって)投げることで、あまり窮屈さを感じることなく安定したサーブが打ちやすくなるということです。

ただし、ある程度卓球をやっているとサーブ時の体重移動の重要性が分かってきます。

なので、球を自分に向かって投げ上げるよりは自分の身体を球に向かって動かしていく方が良いという考え方になります。

理由②:他のルールとの兼ね合い

上記のメリットはサーブの威力を上げる要素ではありますが、正直、微々たる影響に過ぎないという気もします。なので「ほぼ垂直トス」が存在する理由としては少々弱いかなと。

それでは他にどんな理由があるのかと言われるといまいち確信はないのですが、他のルールとの兼ね合いの部分が大きいのではないかと私は思っています。

1. ボディハイド(身体で隠す)サーブ禁止との兼ね合い

斜めトスが許容されると、身体の近くでインパクトする方が安定するという理由で、自分の方向にトスを上げる人が増えると思われます(フォアサーブの場合)。

このとき、投げ上げた球の軌道はほとんど見えているけど、インパクト部分だけはグレーのような状況が発生しやすくなります。これが揉める原因になりやすいので垂直性を取り入れよう、という理由です。

アングルトスによるボディハイドのイメージ

2. トス16cmルールとの兼ね合い

斜めトスが許容されると斜め方向の球の軌道にごまかされて、実際上方向に16cmトスされているか分からん!ということになりかねません。

もともと目視で16cmという微妙な数字を判断すること自体が結構難しいのに、そこに斜め成分が加わるとさらなる混乱は必至。この混乱を解消するためにも、せめてトスの垂直性はある程度、担保しようという理由です。

アングルトスによる高さ方向曖昧化のイメージ

最近の動向

去る2019年末に行われたグランドファイナル。この大会でTTRというチャレンジシステムの試験導入が行われました。

これによりエッジボール判定、サーブのネットイン判定、ボディハイド判定などが画像解析をもとに行われました。

その中にはサーブの垂直トス判定も含まれていました。つまり、今まで漠然と「ほぼ垂直」と定義されていたトスの角度について、画像判定をもとにした何らかの基準が設けられたと考えられます。

その基準値を確認できる情報サイトには私自身、まだたどり着けていない(ルールブックにも載っていない)のですが、2020年1月のドイツオープンでITTFの名物解説者アダム・ボブロウさんがこの基準について言及していたので、ここではそれを引用したいと思います。

【状況】

第5ゲーム9-3から、オフチャロフ選手が投げ上げサーブについてトス角度の指摘を受ける。その後、10-3で再び投げ上げを試み、今度はフォルトを宣告された。

【解説】

「(フォルトがトスの角度を問題視したならば)これは私にとっては興味深い。なぜなら、指摘を受けたサーブはハイトスサーブであり、普通は投げ上げ地点と落下地点のズレはそんなに問題視されないからです。

どういうことかというと、理論上は横方向に15フィートずれたとしても、40フィート上空に放り投げていれば問題はないのです。トスの角度というのは縦横の比率の問題なのです。

なので、現時点ではどういう理由でフォルトだったのか、はっきりとしたことは分からないのですが、もしこのフォルトがアングルを問題視したものであるならば、ディマ(オフチャロフ選手)の苛立ちも理解できるというものです」


 

ここでアダムさんは【横:縦】= 15 : 40という比率を持ち出しています。この比率の範囲内に収まっていれば、多少トスが斜め方向でも問題ないということです。ざっくり言うと、横方向のずれと比べてトスの高さが3倍弱ぐらいまで確保できていれば、垂直性の問題はクリアできていることになります。

この数字が正しい情報なのか定かではないですが、アダムさんはおそらく皆が思っている以上の卓球狂(※褒め言葉です)ですので、個人的には信ぴょう性のある数字であろうと思っています。

まとめ

と言っても、この比率を覚えたところでこれに基づいた目視判定はほぼ不可能ですし、数字そのものを気にする必要はないでしょう。

ただ、ハイトスサーブについては、投げ上げ地点と落下地点のズレがあってもそこまで目くじらを立てるほどのことではないというのは覚えておくといいかもしれません。市民大会でアングルクレーマーに遭遇したら、今回の内容を慈悲の心をもって優しく教えてあげましょう。

ということで、ここで皆様にいちばんお伝えしたい結論というのは冒頭でも述べたとおり、

ハイトスサーブであれば、投げ上げ地点と打球地点がある程度離れていても違反にはなりにくい

というものになります。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考資料

[1] 2020 ITTF handbook

[2] Table tennis review (TTRに関する説明資料。表紙の丹羽選手の表情が渋いっす)