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サーブで体重移動が重要な2つの物理学的理由

フォアドライブなどのパワー系技術では体重移動の重要性を認識しつつも、サーブでは体重移動をあまり意識しなくなってしまう人、ひょっとしたらいるかもしれません。少なくとも私は、そういう段階を経て「やっぱりサーブでも体重移動は重要」という意識を持てるようになったタイプです。

ここでは物理学的な視点から、サーブでも体重移動が重要な理由について、2つに分けて説明してみたいと思います。

サーブで体重移動がおろそかになる理由

サーブで体重移動が軽視されがちな理由として、サーブに関しては体重移動しなくても、極端に言えば手首の力だけでそこそこ回転のかかったサーブを出せるからではないかと思います。

卓球初心者の場合、まずは回転をかけるためにボールを薄くとらえる練習をしまくります。

回転をかける感覚をやしなう練習は、ボールとラケットさえあれば割とどこでもできますよね。布団の上に座ってボールを擦り上げる、なんてことをやったことのある方も多いのではないでしょうか。

そうこうして習得した技術を、今度は卓球台で試してみる。当然、布団の上での練習とはラケットの振り方ボールの打ち出し角度などが変わってくるため、それらの調整のためにあれこれ時間をかけます。そうして反復練習した結果、回転のかかった良い感じの弾道のサーブが入るようになった。この過程で、体重移動まで気にする人はそんなにいないと思います。

ただ、特に初級者ほどサーブの体重移動は重要なのではないかと、個人的には思っています。

サーブで体重移動が重要な理由

1.力を生み出しやすい

これは単純です。当サイトの別記事でもよく使っていますが、高校物理の一丁目一番地で習う以下の式があります。

力 = 質量 × 加速度

この式より、力が質量に比例して大きくなるということが分かります。

体重移動しないときの質量というのは、せいぜい腕1本分ぐらいなのでたかが知れています。やはり大きな力を生み出すには身体全体を使う必要があります。

サーブにそんな「大きな力」は必要ないんじゃないか?と思うかもしれませんが、強い回転を生み出すには、やはり一定の力が必要です。

しゃがみ込みサーブは身体全体の力を活用しやすいサーブのひとつです。

大人よりも子どもの方が王子サーブなどのしゃがみ込み系のサーブを多用する傾向がありますが、その理由のひとつはまだパワーが備わっていない子どもでも力を生み出しやすいからです。

※大人がしゃがみ込みを多用しない理由は、ほかにもいくつかあります。

  • 身長が伸びて、しゃがみ込みからの戻りが気になり始めた
  • その他、単純に加齢による妥協なんてことも

2.安定感が得られる

もうひとつの重要な点は、安定感です。

結論から言ってしまうと、腕だけでサーブを出すときと比べて、身体全体を使ってサーブを出した方が動きの速さが求められない分、パフォーマンスが安定します。

先ほど、大きな力を生み出すには身体全体を使う必要があるという話をしました。同じ大きさの力を腕だけで伝えようとすると、その分、腕の振りを速くする必要があります。

しかし人間たるもの、動きの速さを上げるとその分、精度が落ちます。その辺の精度を上げるために反復練習をするわけなのですが、速い動きで球を正確にとらえる技術というのは試合当日の緊張など、メンタルの状態に影響されやすいものです。

最悪の場合、それがイップスの原因になったりもします。

卓球におけるサーブイップスとその対処法

それに対し、体重移動の力を使うと、腕の力をそんなに使わなくてもそこそこ回転のかかったサーブを安定して出せます。このとき、「体重移動の速さは問題にはなりません。

「サーブを出すときに、身体を後ろから前へ高速移動させるのだ!」

という指導者はいないはずです。繰り返しになりますが、身体全体を使えれば、身体の動きの速さ自体はそんなに重要ではないからです。

まとめ

今回はサーブにおける体重移動の重要性についてまとめてみました。

初級者の方で回転をかける感覚を身につけることができたならば、今度は回転をかける際に前腕だけではなく身体全体を使った練習をしてみてはいかがでしょうか。前腕や手首だけを使う場合と比べて、コースも回転量も安定するはずです。

特に試合で緊張しやすい人(=私ですが)は、サーブで身体全体の移動を意識するのが大変おすすめです。