人間の腕の関節(自由度)についての概要と卓球における使われ方の続きです。
ここでは、前回の話の中で出てきた7つの自由度のうち、フォアハンドに関わりの深い以下の3つの自由度にクローズアップします。
- 肩の前後の自由度
- 肩の左右の自由度
- 腕を曲げたり伸ばしたりすることができる自由度
これらの自由度の動きから、フォアハンドのドライブとスマッシュの打ちやすい領域を考えていきたいと思います。
3つの自由度についてのおさらい+α
1. 肩の前後の自由度
腕を下げた状態で前後に振れば、これは歩いているときの腕の動きになります(下図【A】)。
腕を水平に上げた状態で前後に振れば、フォアハンド系のショットを打つときの動きに近くなります(下図【B】)。
また、腕を真上に上げた状態で前後に振れば、野球のオーバースローの動きになります。卓球ではロビングされた球を叩きつけるように打つときに使うことがある動きです(下図【C】)。
これらはすべて「肩の前後の動き」であり、どちらかというと球に威力を出すために重要な動きです。
2. 肩の左右の自由度
フォアハンドでは下から上に振り上げるような動作で、主にスピンをかけるために必要な動作です。
しかしこの動作のみで純粋なトップスピンをかけようとした場合、肩の位置で打球したとき以外はカーブがかかってしまいます(下図)。肩の位置で打球するとスイング方向に左右の成分が入らず、純粋なトップスピンになります。
※イラストの人物のフォームにやる気が感じられませんが、編集の都合上、ご容赦ください。
よって、ここまでの話だけだとクセのないトップスピンをかけるなら打球点は肩の高さ付近?と一瞬思うかもしれませんが、さすがに腕を伸ばした状態でドライブを打っても安定しませんよね。
参考記事:卓球における打球の安定性に影響する要因
そこで重要になってくるのが、肘の曲げ伸ばしの要素です。
3. 肘を曲げたり伸ばしたりすることができる自由度
肘を曲げることによって、純粋なトップスピンをかけられる領域が広がります。下図を見て分かるとおり、腰のやや上のあたりから肩までがこの領域に該当します。
この領域内のどこかに「最もトップスピンを打ちやすいポイント」があります。多くの場合、胸部近辺になると思います。
実際は肘の角度をコロコロ変えていては打球が安定しないので、上述の「最も打ちやすいポイント」で打てるように身体の位置・向き・軸・重心などを調節しながら対応していくことになります。
ドライブとスマッシュの最適領域
以上の話をもとに、スピンをかけるのに最適な身体の領域を図示すると、以下のようになります。それ以外の領域は、フラットで打つ方が理に適っています。
なお、この最適領域はラケットの種類(ペンorシェーク)や握り方で若干変わってきます。
(もっと言えば、関節の可動域の個人差などによっても微妙に変わるかもしれません。)
スピン最適領域から外れた場合のドライブ
球が低い場合
球が低い場合の対応策は、大きく分けると2つあります。
1. 身体の重心を下げる
下図のように、重心を下げれば低い球にもスピン系の球で返球することができます。
2. 身体の軸を傾ける
身体を傾けることで、スピンが打てる領域をさらに下げることができます。こうすることで地面すれすれの球に対してでもスピンをかけることができますが、この場合は軸を倒している分、カーブがかかりやすくなります。
※右側の人の元画像はアイスホッケーなので踏み込みが甘いですが、例によってお気になさらずお願いします^^;
球が高い場合
高い球に対してドライブを打とうとするのは、あまり現実的ではありません。基本的に卓球はピッチの速いスポーツなので、ジャンプすると次の動作が間に合わないからです。よって、ジャンピングショットを打つ機会はごく限られています(高いロビングに対するスマッシュのときぐらいです)。
高い球に対してはスマッシュで叩くか、ドライブが打てる領域まで落ちてくるのを待って打球します。
まとめ
ここでは基本的な腕の自由度からスピンショット(ドライブ系)とフラットショット(スマッシュ系)の最適領域を考えてみました。もちろん、人間の動きはもっと複雑なので、必ずしもすべての状況でこれが当てはまるわけではありませんが。
このような視点で考えていくと、
- スマッシュの際に目線を球に合わせるのが効果的な理由
- 女子選手にスマッシュが得意な人が多い理由
などが理解できてきます。当サイトでも、いくつかの記事で考察しておりますので、よろしければご覧ください。