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ジャイロ回転のサーブを打つ方法とその特性

ここでは、ジャイロ回転サーブについて以下のような章立てで解説しております。

  1. ジャイロ回転とは
  2. ジャイロ回転のサーブは出せない?
  3. ジャイロ回転サーブの利点と弱点
  4. ジャイロ回転サーブの効果的な出し方

興味がございましたら、ぜひご覧になってください。

1.ジャイロ回転とは

ジャイロ回転とは、球の回転軸が球の進行方向を向いている回転の状態です。

言葉だけだとちょっと分かりにくいので、図にしてみます。
よくある打球の回転と比較してみると、以下のようになります。

【A】ドライブ回転
【B】横下回転
【C】ジャイロ回転

各打球の回転の比較

赤線が球の回転軸です。【C】ジャイロ回転の回転軸は、画面奥から手前に向かうイメージです。

2.ジャイロ回転のサーブは出せない?

ジャイロ回転のサーブの出し方は、たまに動画などで見かけます。
ただ、厳密な意味でのジャイロ回転は、卓球のサーブではほとんど不可能と言っていいでしょう。

その理由は主に2つあります。

理由1:ジャイロ回転で球を打ち出すのは理論上不可能

まず、ジャイロ回転(のための回転)をかけるためには、下図の球の赤線部のどこかを接線方向に擦る必要があります。
ジャイロ回転のかけ方その1

卓球のサーブに応用するのであれば、球の真下を横方向に擦るのが最も現実的な回転のかけ方になると思います。

問題はこの次で、この回転を生み出しつつ、前方への推進力を加える必要があるというところです。

卓球の場合、サーブを前方に進ませるには

  • ラケットを(少しでも)前方に振る
  • ラケット面をある程度(45度程度に)立てておく→球の落下する力を、球が前に進む力に変えられます
  • ドライブ系の回転をかける

上のようないずれかの力が必要になってきますが、これらのどの力が加わっても、純粋なジャイロ回転を生み出すことはできません。

「前に押し出しながら横に転がす」ような意識をしたとしても、現実問題として打球は一点でしかとらえることができません。

どんなトッププロのサーブをスーパースローで見ても、打球時に球がラケットの上を転がるようなことはありません。それが許されるのは、「テニスの王子様」の不二周助くんなど、漫画の中のごく一部の天才に限られます

そしてその一点で球をとらえたときのラケットのスイング方向により、球の回転軸が決まります。

以下の図は卓球台を上から見た図で、ジャイロ狙いのサーブを出したときの、実際の回転軸の一例を示しています。
(青矢印は球を擦った方向、黄矢印は球のおおよその進行方向です)

ジャイロ回転を狙ったサーブの出し方

【A】球の真下をとらえ、少し前進性を持たせた打球
【B】球の少し後ろ側をとらえ、少し前進性を持たせた打球
【C】純粋なジャイロ回転の球(理想論・実現不可能)

現実上は、どのように球をとらえても回転軸が上下左右のいずれかにズレてしまうことが分かると思います。

↓参考動画。動画の中で【A】は真下をとらえていませんが、本質的には同じ回転軸になります。

理由2:バウンドするとジャイロ回転ではなくなる

仮にジャイロ回転の球を打ち出すことができたとしても、ひとたびバウンドすればジャイロ回転の影響で横に曲がり、進行方向が変わります。それに対して、回転軸の向きはバウンド前後でそんなに変わらないはずです(多少は変わるかもしれませんが)。

「回転軸が相手の方向を向いている限りはジャイロだ!」というならそれはジャイロということでいいのかもしれませんが…。

例えばジャイロサーブ(仮)がバウンドごとに下図のような軌道を描いたとします。

ジャイロサーブの軌道の一例

この間、回転軸は一貫して対戦相手の方を向いていると仮定すると、上図の4~5バウンド目あたりでは、ジャイロボールというよりはもはや「右方向に進んでいくドライブ回転の球」という表現の方が正しいです。

野球のピッチングなどのように、ノーバウンドの球に対してはジャイロボールの定義も明快ですが、卓球のように相手に到達するまでに2バウンドもする球については、どの段階をもって「ジャイロボール」と言うのかがあやふやです。
「ジャイロのつもりで出した球でも2バウンド後には単なる横下回転でした」なんて、いかにもありそうな話です。

3.ジャイロ回転サーブの利点と弱点

細かい回転軸の話はおいといて、軸の向きがジャイロっぽければジャイロってことでいいじゃない!

ということで、ここでは何となく回転軸が相手の方向を向いていればそれはジャイロということにして、ジャイロ回転サーブの利点と欠点について考えます。

ジャイロサーブの利点

個人的見解ですが、ジャイロ回転のいちばんの利点は「(回転量が同じであれば)バウンド時の横方向への変化が最大である」ところだと思います。これによってレシーバーの体勢を崩せる可能性があります。

  • ドライブ回転サーブ:手元でノビてくる(推進力が最大)
  • ブチギレ下回転サーブ:台上で止まる(ブレーキ力が最大)
  • ジャイロ回転サーブ:急激に横に曲がる(横への変化が最大)

これらの変化はすべて急激なものです。その理由は、球がバウンドするときに、球の回転速度の最も速い部分が台と接するからです。台と接したときに摩擦力が生まれ、摩擦力が大きいほど、それに対する反発力も大きくなります。

参考記事:卓球における回転軸と、回転軸を外す意義

だから、ドライブ回転のサーブは振り遅れてラケットの角に当たりやすく、ブチギレ下回転サーブは踏み込みが甘くなるなどでネットに引っかけやすくなります。

ジャイロサーブを出したい場合は、この「横方向の変化」を強調できるような出し方が良いと思います。

この考え方については、以下の動画で解説してみました。

ジャイロサーブの欠点

ジャイロ回転がバレた時のリスクは、結構高いように感じます。

というのも、ブチギレ下回転などの場合は、球の回転速度が速い部分がこちらに迫ってきます。
だから人はその影響を回避するために、例えばチキータで攻撃する際にはその部分を避けて、球の側面をとらえるなどの工夫をするわけです。

ところがジャイロ回転では回転軸が相手を向いており、回転軸付近というのは回転の影響が少ないことから、渾身の横回転をかけても一発で打ち抜かれる可能性があります。

下回転とジャイロの回転速度の速い場所遅い場所

【A】下回転サーブの回転が強い部分、弱い部分
【B】ジャイロサーブの回転が強い部分、弱い部分

結局のところ、ジャイロを打ったとバレないような工夫をする必要があります。

4.ジャイロ回転サーブの効果的な出し方

それでもジャイロを打ちたいあなたへ

そんなわけで、「ジャイロ回転」という響きだけですと、なんか強そうというイメージを持ってしまいがちですが、ジャイロ回転のサーブが打てたところでそれ自体がスゴイわけではなく、それと同じフォームで何か別の回転のサーブが出せてはじめてスゴイと言える可能性があるに過ぎません。これはどんなサーブでもそうですが。

「何となくカッコイイから!名前が!」というような理由で取り組むのであれば、むしろまずは下回転とナックルを同じフォームから打ち分けられることから始めた方が強くなれると思います。

結局のところ、大事なのは同じモーションから異なる回転のサーブを(あわよくば軌道も似せて)出せることですので。

それでも打ちたい!という方のために、私が考える効果的なジャイロサーブの出し方(=横の変化が最大限生かされる出し方
を説明したいと思います。

打球点

ここでは右利きの人のフォアサーブを想定しています。セオリーは「真下を横方向に擦る」ですが、私が考える効果的な出し方は、下図のように斜め下から斜め上へ切り上げる方法です。
ジャイロサーブの打球点

【A】手前から見た図:すくい上げるような擦り方で打つ
【B】上から見た図:前方向にも少しラケットを振り、前進性を持たせる

イメージとしては、普通の順横回転サーブのフォロースルーのときにラケットヘッドを上に向け、そのタイミングで打球する感覚です。

軌道

セオリー通りに真下を擦ってしまうと左前方に球が打ち出されますが、回転は右に曲がる回転がかかっているので、打球の軌道としては「最初は左方向だけどだんだん右方向に変わっていく」ものとなります。

ジャイロサーブの軌道の一例

前と同じ図を再び引用しますが、こんな軌道です。で、レシーバーが打つタイミング(2バウンド目から3バウンド目にかけて)ではほとんど右にも左にも曲がっていない状態になる可能性が高いです。

そこで「下から上へ擦り上げる」打ち方をすることで、左方向へ打ち出されるのを防ぎます。

うまくいくと1バウンド後には少し右方向の成分を持ちながら進んでいくようにできます。ちょうど回転軸もやや右に傾くような軸になるため、1バウンド目から2バウンド目にかけてはガチのジャイロになる可能性も出てきます。

そして2バウンド目、もともと右方向に進んでいた球にさらに右方向への強烈な摩擦がかかるため、ここで急激な横への変化が期待できるというわけです。

注意点

ただ…紹介した打法だと、ほとんど手首の力だけで回転をかけるような形になるので、体重移動や体の回転、腕の振りなどを融合した横下・横上回転サーブのような回転量は出せないのではないかという懸念があります。

打球点はともかくとして、体をどのように使って強い回転を生み出すのかについては考えていく必要があるといえます。

※バックサーブだと上述の打球点で切り上げやすいですが、急激に曲げることを想定すると、「右利き選手が左利き選手の立ち位置でサーブを出す」ようなイメージになります。このときの軌道は左利き選手の順横回転サーブと似たイメージです。

もちろん、上述の立ち位置でサーブするとバック側が無防備になりやすいので、忍者のようなフットワークで戻れる人じゃないと厳しいかもしれません。

↓フォアサーブとバックサーブ、それぞれでジャイロサーブを打つ具体例を紹介した動画です。

まとめ

本記事では、ジャイロ回転サーブの特性や打ち方などについて、私の主観も含めていろいろまとめてみました。

このサーブは利用価値があるのかという「そもそも論」はさておき、ここで紹介した打ち方に関してはまだまだ改善の余地があるのではないかと思います。
ジャイロ回転という面白い回転軸を持つ、このサーブについて、あれこれ考えてみるのも時には良いのではないでしょうか。

ひいては皆さんがオリジナルサーブを開発する際の、ひとつの参考になれば幸いです。