卓球サーブトスの「ほぼ垂直」はどこまでが許容範囲?の続きです。
前回の記事では、2020年ドイツオープンの荘智淵vsオフチャロフ戦におけるオフチャロフ選手のサーブフォルトに着目し、その時の実況解説をもとにサーブフォルトと判定される一定の縦横比があることをご紹介しました。
ただ、その後の調査で別の数値基準を発見したので、今回はそれについてご紹介したいと思います。
その基準は以下の動画、第3ゲーム1-2から林高遠選手がサーブトスの垂直性を指摘された場面になります。
ここでは3-3のタオルブレイクまでの間にかけて、以下のような解説がなされています。
真上に投げ上げた状態からいずれかの方向に30°以上傾いた場合、それは違反とみなされます。
つまり、以下の図のような感じですね。
前回の記事でも書きましたが、これらの数値基準はあくまでワールドツアーで用いられるチャレンジシステム(TTR, Table Tennis Review)で適用されるもので、目視では判別が困難なので神経質になる必要はないのですが、
- 投げ上げが高ければ多少の着地点のズレは許容される(前回のオフチャロフ選手)
- 同程度の着地点のズレでも、投げ上げが低いと許容されない場合がある(今回の林高遠選手)
という程度のことは知識として身につけておきたいものです。着地点のズレの程度問題ではなく、投げ上げ角度の問題であると。
投げ上げ角度問題
で、ここからは茶番なのですが(というかその茶番を追求するのが当サイトの真骨頂なのですが)、この30°という投げ上げ角度のズレと、前回出た15:40という縦横比。この2つの整合性について検証していきます。
「角度30°で投げ上げる」というフレーズを聞いて、ピンときました。これは高校物理でよくある、ボールの投げ上げ問題であると。
太郎君は(水平からの)角度60°、初速度V0で球を投げ上げました。飛距離Xと最高到達点Yを求めよ。
これですね。こいつを解いていきましょう。(なお、この問題では空気抵抗は無視します)
ボールの挙動をx方向とy方向に分解し、それぞれで時間ごとの速度と距離を求めていきます。
まずは初速度をx方向とy方向に分解。
…②
※()内の0は時間(投げ上げ0秒後=投げ上げ直後の速度)を表しています。
t秒後の速さは、
x方向には重力などの力がはたらかず、速度は変わらない
…④
時間経過ごとに重力加速度の影響で速度が減少し、ある地点でゼロになり(=頂点)、そこからマイナス(落下)になる
そのときの位置(距離)は速度を積分して求めます。
…⑥
さて、球が軌道の頂点に到達したときはy方向の速度(④の値)がゼロになります。④の左辺にゼロを代入することにより、球が頂点に達するまでの時間が求められます。
…⑦
これを⑤、⑥に代入すると、投げ上げ地点から頂点までのx方向、y方向の距離がそれぞれ求められます。
…⑨
投げ上げ地点から頂点までのx方向の距離と、頂点から落下地点までのx方向の距離は同じなので、上のXの値を2倍にして飛距離を出します。
最後に、この2つ(⑩と⑨)の縦横比を見てみます。
ルートを外すと、約2.3 : 1という結果になりました。
…んん?投げ上げ高さよりも横幅の方が長くなってしまいました。一応、模範解答もチェックしたので、間違ってはいないと思うのですが。
最後に、前回の縦横比と今回の縦横比を比べてみましょう。
【D1】前回…15:40の説
【D2】今回…√3:3/4の説
…全然違いますな。投げ上げが【D2】ぐらいずれたら、多分アウトですよね。
前提条件が違うのかもしれません。例えば30°っていうのが、以下の角度を表しているとか。(解説を聞く限り、そうは聞こえないのですが)
まあ、現段階であまり深追いすることもないと思うので、今回はこの辺で(冒頭でなんとなく茶番と書いてみたけど、マジで茶番だった…)。また何か分かったら追記していきます。(情報をお持ちの方がいましたら、ぜひTwitterなどでお知らせください~)