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カウンタードライブの物理学

今回は卓球でしばしば使われるカウンタードライブについて、コテコテの理屈で解説していきたいと思います。

実際の打ち方に関しては、世の技術動画をご参照ください。

※前座

子供「どうして卓球は観戦している人が盛り上がるの?」

母親「それはカウンタードライブがあるからなのよ、マイキー」

父親「がんばって返した球も一瞬で逆方向に打ち返されてしまう、それがカウンタードライブの恐るべき力なんだ」

子供「カウンタードライブって怖いね!」

父親「ママと同じぐらい、な!」

一同「アハハハハハ…!(以下略)」

※セリフはFURNITURE DOMEの昔のTVコマーシャルを参考にしています。

前置き

失礼しました。

さて、卓球のカウンタードライブといえば

  • 早い打点で
  • ラケットを被せるように打つ

といった特徴が思い浮かびます。

テニスなど、他の競技をやっていた人間からすると、「そんなにラケット面を被せたら絶対ネットするでしょ」というぐらいラケット面を被せます。

なぜ、そんなに面を被せるのか。それによって得られる効果は何か。

ここでは、カウンタードライブにおけるラケット面の角度の特徴とその効果について考えていきたいと思います。

カウンタードライブの打点が早いことによる影響

カウンターというからには、相手に次の打球の準備をさせないために、早い打点で打つことが求められます。

相手の打球の質にもよりますが、通常のドライブに対しては頂点付近までに、ループドライブに対しては頂点前でとらえてしまいたいところです。

では、打点が早いと物理的にはどんな影響があるでしょうか?

1. 台からの距離が近くなる

まず、早い打点で打つということは、より台に近い位置で打つということになります。

より台に近い位置で打つということは、通常の打球点で打ったときと同じように打ってもオーバーミスしてしまうということです。

打点の早さの違い

【A】通常の打点
【B】早い打点(点線は【A】と同じ)

【B】で【A】と同じように打っても、距離の差分によってオーバーしてしまいます。

2. 球のライジングをとらえる

早い打点で打つということは、相手の打球のバウンド直後、球の上がり際(ライジング)をとらえるということです。

そしてライジングをとらえるということは、頂点でとらえたときと比較して、やはりオーバーミスしやすいということです。

下図では、分かりやすいようにラケット面を台に対して垂直にして描いています(球の回転の影響は無視しています)。

頂点前と頂点の違い

【A】頂点で打球…頂点では上下方向の速度成分がないので、入射してきた方向にそのまま発射されます
【B】頂点前で打球…上がってくる球に対して【A】と同じように打つと、上方に発射されます

【A】と【B】では発射角度が違う分、球の軌道も変わってきます。(球の発射角度と軌道の関係については、以下の関連記事をご覧ください)

影響のまとめと対策

まとめると、カウンタードライブを打つ際には

  • 普段よりも台から近い位置で
  • 上がってくる球を叩く

という、通常とは異なる2つの要素があり、これらは共にオーバーミスの原因になる要素なので、これを2つとも帳消しにするような打ち方を心がける必要があります。

卓球では、「オーバーミスを防ぐためには、自分の打球の軌道の頂点が自陣に収まるイメージで打て」と言われることがあります。その観点で改めて上の2つの図を見てみると、この2種類のオーバーミスは、共に軌道の頂点が相手コート側にシフトした結果であるということが分かると思います。

これを解決する方法が、できるだけラケット面を被せて打つということになります。

カウンタードライブでラケット面を被せることによる効果

ラケット面を被せることでどのような効果があるのか。ここでは、実はオーバーミスを減らすことだけが利点ではないという部分について解説していきます。

1.オーバーミスの抑制

これは、ここまでの話で解説してきた点です。ラケット面を被せることで、球が上方向の成分をもって発射されるのを防ぎます。これにより、

  • 台から近い位置で打つことによるオーバーミス
  • ライジングでとらえることによるオーバーミス

この2つを防ぐことができます。

2.軌道の安定

もうひとつ、ラケット面を被せることで得られる重要な効果があります。それは、バウンド直後の球に対してラケット面を被せるように打つと、打球のとらえ方が自然と「ドライブを打つときの擦る形」になるということに関係があります。

ラケット面と打球のとらえ方

【A】叩く打ち方…普通のフォア打ちなどで多用する角度
【B】擦る打ち方…カウンタードライブで用いられる角度

頂点後の球は下に向かって落ちるため、ラケットを上方に振り上げることで【A】の角度でも擦るドライブを打つことができるのですが、ライジングの球に対してはこの角度だとほとんどフラット打ちになってしまいます。そしてフラット打ちになると打球の軌道が安定しにくいのです。

以下の記事では、相手のドライブ(トップスピン)回転の球に対して、スマッシュなどのフラット打ちよりもドライブで返した方が安定する理由を、理論的に解説しています。

この記事を簡単にまとめますと、スマッシュ系(叩く打ち方)で球をとらえると、相手の球の回転量によって発射角度がかなり変わってしまいますが、ドライブ系(擦る打ち方)で球をとらえると、相手の球の回転量によらず発射角度をほとんど一定に保つことができるということが書いてあります(その分、空振りの確率は上がってしまいますが)。

特にカウンタードライブを狙う局面というのは、相手がつなぐ意識で「威力よりも回転量(もしくは確実性)を重視した球」を打ってきたときです。そこで、相手の球の回転量が読み切れないときほど、擦る打ち方による軌道の安定という部分が効果的になってくるというわけです。

まとめ

このように、カウンタードライブを打つ際にラケット面を被せることが、単純にオーバーミスを防ぐためだけの理由ではないことが分かると、実戦でより効果的な技術の選択ができるようになると思います。

例えば、相手の球の回転量が大したことなさそうだと判断できたならば、必ずしもラケット面を目一杯被せて打つ必要はなく、威力を重視した打ち方に切り替えることもできます。

逆に、どのぐらい強烈な回転がかかってるか分からんなあ、という場合は、擦ることを重視して打球の発射角度を安定させるのが良いでしょう。

遅めのドライブが来てもなんとなくブロックしてしまう。そんな方は、上記のことを意識しながらカウンタードライブの練習に取り組んでみてはいかがでしょう?