卓球におけるサービス(以下、サーブ)は、数ある技術・打法の中でもいちばん個性が出やすい部分じゃないかな、と思います。
打球点を球のある一点に決めたとしても、その点をどのようにとらえるのか、いろいろと考えられます。
- 厚く当てるのか薄く当てるのか
- 手首を使うのか使わないのか
- スイングは速いのか遅いのか
- ラケットの先端でとらえるのか根元でとらえるのか
- ラケットヘッドは下に向けるのか横に向けるのか、はたまた立てるのか
これら以外にもまだまだあると思います。
同じ場所をとらえる前提でもこれだけの選択肢が考えられるのに、さらに球をとらえる場所のバリエーションがあり、台より後ろであれば立ち位置も自由で、バウンドも1バウンド目と2バウンド目がそれぞれ自分のコート内、相手のコート内であればどこでもいい(シングルスであれば)。
ここではそんな幅広い選択肢を持つサーブにおける球のとらえ方を、「サーブを切りたいとき」と「サーブを曲げたいとき」に分けてピックアップしたいと思います。
サーブを切りたいとき
大前提は、薄く当てる
卓球では、フラット打ちのように叩く打ち方を「厚く当てる」、球をかすめるように擦る打ち方を「薄く当てる」と言うことがあります。サーブを切りたいときに限らず、球に回転をかけたいときには、まずこの「薄く当てる」ことが必須条件となります。
どこかの海外の動画で
- ラケットの代わりにナイフを持ち、
- 球の代わりにリンゴを投げ、
「落ちてくるリンゴの皮だけをナイフで切る(剥く)イメージ」と紹介されていました。いちばんイメージしやすい例えかなと思います。
当サイトでは「球の表面すれすれをデコピンする」という(ちょっといまいちな)表現をしています。
参考記事:モーメントと球の回転
手首を使う場合はラケットヘッド(先端)で打球してみる
手首を使うということは、手首を支点としてラケットを振り子のように振るような動作を行うということです。
このとき、ラケットヘッドの方が中央よりも移動距離が大きい=速度が速いことが分かります。
※画像はシェークハンドにしていますが、一般にペンホルダーの方が手首は使いやすいと言われています。
これは肘を支点とした場合でも同じことがいえますが、正直、肘からラケット中央までの距離と、肘からラケット先端までの距離は大して変わらないため、あまり考えなくてもいいと思います。
手首を支点とした場合の方がラケットの先端で打球した際の効果が大きいです。
手首を使わない場合は体重移動を気にしてみる
手首を使うと確かに回転はかかるけど、空振りが増えて安定しなかったり、試合で緊張すると練習でできていたことができなくなったりします。そんなときはあえて手首を固定して、体全体で打ってみるのも手です。
フォアサーブの場合、体重を後ろ(右利きなら右足)に預けた状態からインパクト時に前に体重移動させることで、その動きの分の力が伝わります。体幹を軸として体を回転させながら打つのもいいでしょう。
例えるなら、木の枝にくくり付けたラケットを振ったときと、丸太にくくり付けたラケットを振ったときぐらい、安心感が違います(丸太は振れないか…)。
丸太での打球(=体を使った打球)なら、少々のことではブレないので、安定感が増します。
打ち出す方向のベクトルを気にしてみる
きました、ベクトル。ここまでの内容は、本や動画を見れば大体教えてくれますが、このベクトルという視点で教えてくれる媒体は、そんなにないのではないでしょうか。
サーブというのは、落下してくる球に対して打球しなければなりません。つまり、同じスイングスピードでも、ラケットを上から下に振り下ろす場合と下から上に振り上げる場合では、球への力の伝わりやすさ(反発力)が変わってきます。
【E】よりも【F】の方が反発力が大きく、その分、回転をかけやすくなります。
ただ、いくら回転をかけやすいからと言っても、現実には【F】のような打ち方をすると下回転をかけていることがバレバレになってしまいます。この打ち方は一人で回転をかける練習をしているときか、「台上で戻るサーブ!(キリッ」と言いながらはしゃぎたいときぐらいしか使いませんw
一般的には、ラケットを45度ぐらいの角度から【E】の角度を経て、最終的に地面と水平になるような動きによって、下回転とナックルを出し分けるというのが、サーブにおけるひとつのセオリーとなります。
これは横回転をかける場合でも同様で、やはりインパクト時のスイング方向に下方向の成分が少ない方が切りやすいといえます。
しゃがみ込みサーブなどは、一見するとラケットを下に向かって切り下ろしているように見えるのですが、打球点だけ切り取って見ると、ラケットのスイング方向は意外と水平方向に近かったりします。
サーブを曲げたいとき
大前提は、薄く当てる
これも先ほどの「切りたいとき」と同様です。まず前提として回転をかけるには、球の表面を擦るような当て方をする必要があります。
回転軸を意識してみる
回転軸については、近年になって動画で取り上げられることも増えてきました。
一言で「横回転」といってもいろいろと種類がありますが、多くの場合、以下のような【A】横上回転と【B】横下回転を指します。
これ以外にも、台に対して回転軸が垂直な【C】真横回転や、場合によっては回転軸が奥から手前に向かう【D】ジャイロ回転も横回転の一種といえるかもしれません。
そして、こと「サーブを曲げる」という点においては、このジャイロ回転に近い回転のときに最も曲がると考えられます。
打球が曲がるかどうかを考える際、主に2つの力を考慮に入れる必要があります。
- 回転する球の空気抵抗による影響(マグヌス効果と言われます)
- 回転する球が台にバウンドしたときの摩擦による影響
カーブドライブなどを打ったときには前者の影響が大きく現れますが、サーブはドライブと比較して、
- 打球の進む距離が相対的に短い
- 回転量が限定される
- バウンド数が多い(2バウンド)
→サーブは相手の回転を利用できないし、ドライブのように全力で打つこともほとんど不可能。
これらの理由から、後者の「台にバウンドしたときの摩擦による影響」が大きいと考えられるからです。
この辺についても、詳しくは別記事にて解説したいと思います。
参考記事:ジャイロ回転のサーブを打つ方法とその特性