※ここでは私が試合動画の鑑賞を通して感じたことを書いています。プレイしていた選手本人に同様の考えがあったとは限りません。
今回ご紹介する試合は、2020年カタールオープン 男子シングルス準々決勝 梁靖崑vs王楚欽の試合。
この試合の王楚欽選手には、以下のような得点パターンが多く見られました。
鉄板攻撃パターン〜回り込みチキータをバック側へ〜
試合に勝利した王楚欽選手は、相手の回り込みチキータをバック側へカウンターして得点するという、鉄板の得点パターンを確立していました。
ここで、同じ「チキータをバック側へ」といってもチキータのコースとカウンターのコースでいくつかパターンがあったのですが、今回取り上げるのは以下の2つのパターン。
【A1】ミドルからバック側にきたチキータをバック側へ
【A2】フォア側からバック側にきたチキータをミドルへ
試合での主な該当箇所
以下、得点はいずれも王楚欽選手の得点を表しています。
【A1】ミドル→バック
- 第2ゲーム9点目
- 第4ゲーム4点目
【A2】フォア→ミドル
- 第2ゲーム10点目
- 第4ゲーム5点目
※これら以外にもいくつかありますので、お時間のある方は探してみてください。
この【A2】の球はバック側に打った方が、ミドルに打った時と比べて決まる確率は上がりそうですが、王楚欽選手はミドルを狙い、そして得点していました。このあたりで、王楚欽選手が必要以上のリスクを負わずにプレイしているように感じました。
今回は、このように【A2】でバック側ではなくミドルを狙うことでリスクを最小限に抑えられる理由について解説していきます。
リスクが抑えられる理由
理由1:ミドルの方が台が長い
これは卓球だけでなく、大体のラケット競技で意識することですが、クロス方向とストレート方向では台の長さが変わってくるため、一般にクロスを狙うほうがリスクが低くなります。
当然、バックストレートを狙うのとバック側からミドルを狙うのとでは、後者の方がリスクが低いです。
理由2:打球角度が一定に保たれる
先の【A1】【A2】の図を見比べてみると、相手の打球の軌道と自分の返球の軌道が作る角度が一定であることが分かります。
これによって返球が安定します。相手と自分の打球軌道のなす角度を一致させることで、同じような球に対して同じように打つことで同じような球を返すことができます。
以下の図は、相手のフォア側から来た球を【B1】ミドルへ返す場合と【B2】バック側へ返す場合のインパクトの位置の比較です。飛ばす方向によってインパクトの位置が微妙に変わることが分かります。
※打球点やスイング方向は一例です。
そしてこの微妙な変化によって相手から受ける回転の影響が変わり、ミスに繋がる可能性が出てきます。俗にいう「回転が合う、合わない」のようなことが起こり得るわけです。
ミドルから打たれたチキータをバック側へ送って決まるのであれば、フォア側から打たれたチキータをミドルへ送っても決まる可能性が高い。そうすることで打球角度を一定に保ち、相手の球の回転から受ける影響の変化のような余計な要素を排除する。決定力を維持しつつ、自分側のリスクも上げない(むしろミドル狙いでリスクを下げる)ようにすることができるのです。
参考記事:卓球における回転軸と、回転軸を外す意義
まとめ
今回の話は実際に応用できる場面は少ないだろうと思います。例えば、梁靖崑選手のチキータにもう少し横回転のバリエーションやスピードのバリエーションがあったら、そんなことを考える暇もないかもしれません。
「そんな考え方もあるかもしれない」ぐらいに留めておいてください(笑)