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卓球男子ワールドカップ2020・ピッチフォード選手の解説集

2020年11月、中国でコロナ明け初めての国際大会であるワールドカップが開催されました。

解説はいつものアダムさんではありませんでしたが、3位決定戦と決勝戦ではピッチフォード選手がゲストで解説をしていたので、いくつか抽出して翻訳しました。ちなみに実況の方は中国語も堪能のようで、張本選手のお父さんのアドバイス内容にも多々触れており、その点にも注目。

※結構、意訳してます。

男子シングルス3位決定戦 張本智和vsチャンウジン

【以下、敬称略】

3:17~

(実況)張本です。17歳って信じられますか、リアム(=ピッチフォード)?あなたはその頃、どこにいましたか?ジュニアクラブとか?
(ピッチ)私はまだ駆け上がっている最中でしたね。当時はドイツでプレイしてました。(中略)もうずいぶん長いこと彼を見ている気がしますが、まだ17歳だなんて信じられませんね。

4:09~ 呉尚根(オサンウン)について

(実況)チャンウジンのコーチについてはどういう印象ですか?
(ピッチ)現役時代は素晴らしい選手でした。いとも簡単に試合を進めているように見えるという印象がありました。ただ、私が対戦できたのは残念ながら彼の引退間際のタイミングでしたね。

7:11~ チャンウジンが回り込みフォアハンドを決める

(ピッチ)素晴らしいです…このフォアハンド、チャンウジンが試合を通してできるだけ模索したい形です。このフォアハンドが彼の武器です。

8:10~ チャンウジンのプレイスタイルについて

(ピッチ)私は公式戦で彼と戦ったことはありませんが、一緒に練習をしたことがあります。わかりにくく、良いサービスを持っています。回転量の変化にバリエーションがあります。そして彼のトレードマークであるフォアハンド。さらに台上では非常に機敏です。それらの武器を駆使して戦います。今日のこの試合に勝つには、それらの強みを生かす必要があるでしょう。

11:51~ 張本の印象について

(実況)リアム、私、張本が叫ばないとなんか寂しいんですよね。
(ピッチ)分かります。
(実況)ですよね。調子が上がってくると声のテンションも上がってくるのがね。
(ピッチ)ああ、そこにいるな、ってのが分かりますよね。
(実況)あなたが張本と対戦した時も彼は叫んでいたって言っていた気がしますが…ところであなたの場合、張本に対しては戦績良いですよね。2勝1敗です。何か秘密でもあるんですか?
(ピッチ)そうですね、何回かやって…彼のプレイスタイルがなんとなく、私に合うんですよね。楽しんでプレイできています。
(実況)そうなんだ?(叫びで)ビビったりしないですか?
(ピッチ)はい、ただできるだけ気にせずゲームに集中するように心がけてはいます。あとは…バック対バックでは譲らないという気持ちでやっています。今のところはそれがうまくいっている感じです。

17:43~ 第3ゲーム冒頭

(実況)張本のお父さんのアドバイスです。「チャンスを逃すな、掴みにいけ。特にサービスゲームだ。3球目攻撃でチャンスを掴みにいけ」このアドバイスはその通りです。(中略)ここまでの張本は少し固いというか、そうですよね?
(ピッチ)はい、少しだけ固い気がしますね。それによってわずかなタイミングの違いなどが生じて、球にいつものパワーを伝えることができなくなって、それがこの2ゲームでのミスに繋がっている印象です。ネットに弾かれたり、台に収まらなかったりっていう。まだリズムに乗り切れていません。
(実況)今日の午後イチ、馬龍を敗北寸前まで追い込んでいた時のような、あの勢いはまだですね。

20:30~ コロナ対策、手で台に触るの禁止について

(実況)台に汗がついたかな?審判が拭きにきます。手で台に触ってはいけないことになりました。審判に注意されます。
(ピッチ)はい、これまでは手の汗を台で拭いたりしてましたので、慣れるまで結構大変です。

23:10~ チャンウジンの戦術について

(ピッチ)チャンの良い戦術ですね。少しスピードを落とし、回転強めのバックハンドです。張本は速い展開が好きなので、今のに対しては少しやりづらさを感じているように見えます。

25:30~ 張本タイムアウト明け

(実況)父親から多くの技術的指導がありましたが、最後の一文は「自分を信じること」です。

27:50~ 第4ゲーム冒頭

(実況)ということでリアム、先ほどのゲームで父親が「自分を信じろ」という言葉で送り出し、それに沿った形の素晴らしいパフォーマンスを張本が見せました。自分の卓球を取り戻しつつあるように見えますが、いかがですか?
(ピッチ)そうですね。まずは1ゲームを取れたことで安心したと思いますし、今はだいぶ落ち着いているのではないでしょうか。

29:08~ 張本の学業との両立について

(実況)彼は来年のオリンピックが終わったら、まずは高校をしっかり卒業して(今後の)卓球のキャリアに集中したいと語っていました。これはそんな簡単なことではなく、称賛に値すべきことです。彼はまだ高校の学業を終えるために時間を割く必要もあるのですから。
(ピッチ)間違いないですね。トレーニングに割くべき時間との配分は相当難しいでしょう。

31:44~ 張本の戦術について

(ピッチ)立ち上がりに見られたような速いバックハンドではなく、少し遅めの、回転のかかった球を送ることができています。

34:00~ 第5ゲーム冒頭

(実況)ここからチャンウジンは何かを変えなければいけません。流れが変わった理由について、リアムの視点からはどのように映りますか?一体何が起こったのでしょう?
(ピッチ)私の目からは、張本がサーブレシーブで若干リズムを取り戻しているという印象です。より落ち着いてきており、それが「コースの狙い目」や「攻撃の始め方」などにも良い影響を与え、支配力を強めているように思います。チャンはこれをなんとか撹乱したいところですね。

35:50~ 改めて、張本がまだ高校生であることについて

(実況)改めてこの張本という男は大した男だなと。17歳で…私は17歳のときに何してたかなって考えてたんですよ。あの頃の私たちは何かについてそんなに知っているわけではなかった。しかし彼はこの年で既にコートの内外で多くのプレッシャーに晒されています。メディアへの対応だったり、試合や対戦相手から感じるプレッシャーだったり。全く驚異的ですよ。
(ピッチ)ええ、そしてそれら全てに(この年で)うまく対応できているってとこですよね。本当にすごいことです。
(実況)そして前にも言いましたが、それに加えて学業との両立ですね。
(ピッチ)はい、本当に簡単なことではありません。

37:57~ 両者の戦術について

(ピッチ)今の両者の戦術は似ている感じがします。共にサーブの上回転系の割合を高め、チャンスボールを3球目で狙いにいく構えです。

43:00~ 張本が相手のゲームポイントを凌ぐ

(実況)これはまた信じられない…断固たる決意を感じさせる日本の10代のプレイです。
(ピッチ)バックハンドでうまくすくい上げましたね。少し(弧線が)高くなったところ、チャンの手がボールに向かってやや伸びてしまい、ミスにつながりました。これで決めたい、という気持ちが出てしまいましたね。

43:39~ 逆に張本がゲームポイントを握る

(実況)素晴らしいコース取りです。
(ピッチ)ええ、彼はずっとクロスへフリックし続けてきました。そこへストレートへ一発、チャンは完全に無警戒でした。
(実況)少しフェイントも入れてましたよね?チャンのフットワークが乱れました。
(ピッチ)はい、うまい身体の使い方でしたね。クロスへの強打に見えましたから。そこからストレートへの打球でポイントを奪うにあたり、強打は必要ありませんでしたね。

47:48~ 張本の父親について

(実況)張本の父親、張コーチも注意深く見守ります。今はベンチコーチとして息子を指導できる立場にいますが、昔はそうではありませんでした。自分がこのような大きな大会でもベンチコーチに入るに足る人物だということを方々にアピールし、能力を示していくという活動をしていた時期がありました。
(ピッチ)その結果として、こうして親子で助け合うような形で大会の舞台に立てるというのは素晴らしいことだと思います。

52:30~ 第7ゲーム冒頭、最終ゲームについて

(実況)さて、リアム。あなたもこの(第7ゲームという)シチュエーションを経験してきたと思いますが、やるかやられるかのこの状況になった時、何を自分に言い聞かせますか?
(ピッチ)そうですね、どちらもやや緊張した状態でゲームに入ると思うので、立ち上がりで弾みをつけるのが重要だと考えるとは思います。間違いなく。

55:53~ 張本がレシーブで得点

(実況)今のは良い判断です。
(ピッチ)ええ、サーブ(の第2バウンド)がわずかに台から出るのを見逃さず、回転をかけて返球していきました。
(実況)あの辺が判断できるようになるにはたくさんの練習が必要ですよね?
(ピッチ)そうですね、何百万回も…いや、そんなにはやってないか。(でも多くの練習が必要です)

57:12~ 張本の得点

(実況)チャンの最後のループはネットにかかりました。
(ピッチ)私、ひょっとしたら1-1からの(張本がスマッシュミスをした)ラリーの再来になるかと思いました。ああいうミスは頭につきまとうので。