たまには物理とかではなく、卓球について日頃思っていることを、ということで。
今回の記事は字ばっかりです。すみません。
前置き~世界卓球の誤審について~
2019年4月にブタペストで行われた世界卓球の女子ダブルス決勝で、物議を醸す判定がありました。
ゲームカウント2-2の第5ゲーム、9-9からの早田選手のサービスエースがレットの判定に。
↑こちらの動画の45:00からのプレイですね。
リプレイ動画等を見返せば以下のことは明らかなので、当サイトとしては議論の余地なく誤審と断定して話を進めていきます。
- 早田選手のサーブはネットに触れていないこと
- 審判が(ネットに触れた)レットとして打ち直しを命じていること(トスの高さ云々の問題ではないこと)
といっても、別に審判に物申すとかいう話ではなく、あのような誤審をされないために選手側でできることはないのか?という話で、一言で言えば「相手や審判に対してリスペクトの気持ちを持つ」ということです。
リスペクトとは
基本的には「尊敬する」「敬意を表する」「尊重する」などの意味があります。この記事中でも、この意味で使っています。
最近ではそこから派生して「影響を受ける」のような意味合いもあるそうです。
使用例:
「伊藤美誠まじリスペクトなんで。当然、片面表ラバー貼ってます」
(↑こんなキャラの人が卓球界にいるのか不明ですが)
審判へのリスペクトの例
競技は違いますが、ここではサッカーの話を取り上げたいと思います。「審判へのリスペクト」が状況をプラスの方向へ持っていくカギになる可能性がある、という話です。
かつてサッカー日本代表がアジア予選などで中東諸国と試合をする際には、中東諸国に有利な「中東の笛」と呼ばれるジャッジで苦しめられることがありました。以下で紹介するアジアカップでも、中東の笛は選手たちを苦しめます。
長谷部誠選手は自身の著書「心を整える。」の中で、アジアカップでの誤審とその後の対応について触れています。一連の流れをかい摘んで説明すると、以下のような感じです。
- シリア戦で誤審によりPKをとられる。日本選手が詰め寄るも、判定は覆らず。
- 長谷部選手が審判を冷静にさせるような会話をした後、くだけた調子で「次は日本寄りのジャッジ頼むよ」
- 6分後、相手陣内で日本選手が倒され、ファウルか微妙なプレーだったが日本にPKが与えられた。
- 後日、韓国戦で同じ審判が線審を務める。試合前に長谷部選手と挨拶程度の会話。
- ペナルティエリアの境界で日本選手が倒され、主審はエリア内か外かで迷っていたが、その線審がエリア内を主張したためこれが採用され、日本にPKが与えられた。
一連の流れを見てみると、これはもう長谷部選手が審判をもコントロールしてしまったと言っても過言ではない一件だと思います。このアジアカップでの一連の出来事について、長谷部選手は以下のように締めくくっています。
レフリーとはいつどこで再会するか分からず、どんな腹が立つような誤審があったとしても、リスペクトを忘れずに接するべきだと再認識させられた一件だった。
心を整える。 長谷部誠 幻冬舎 最終章 激闘のアジアカップで学んだこと。より引用
最近は中東の笛という言葉を聞かなくなりました。中東勢の選手・サポーター・審判それぞれのレベルが向上しているからかもしれません。あるいは、他地域のファンでも容易に動画にアクセスできるようになり、見る目がシビアになってきたからかもしれません。
しかし、私個人的には上記のような長谷部選手のマネジメントによる部分も大きいのではないかと考えています。
卓球選手にリスペクトはあるか
翻って、卓球選手の試合後の態度を見てみると、リスペクトとかスポーツマンシップといったものが少ないように感じます。
選手同士は健闘を讃えあうどころか握手すら手を合わせるだけのようなモーションが多いし、審判とは目を合わせないどころか明らかに別の方向を向きながら握手している。審判からしたら、失礼を通り越して侮辱ととられても仕方がないのではないでしょうか。
もともと卓球という競技自体が、微妙な判定が生まれにくいスポーツであるということは確かにあります。そして(リスペクト云々は別として)フェアプレーの精神はあるので、大体の場合セルフジャッジで何とかなってしまうという側面もあります。つまり、審判の役割は野球やサッカーと比べるとそんなに重くない。
そのためなのか、私には卓球選手の審判との握手は「一応義務だし、やっとくか」程度にしか見えません。
しかしこれは裏を返せば、握手の際に審判をガン見しながら、その審判の母国語で「ありがとうございました」ぐらい添えることができれば、たったそれだけで違いを生み出すことも可能だということです。それで審判に「お、こいつは見どころがあるな」と思わせることができればしめたものです。少なくとも「国籍が気に入らないから不利な判定をしてやろう」とは思いにくくなるはず。
もちろん、審判が誤審はおろか、色をつけるなんて本来プロとしてありえません。しかし、審判も人間である以上、感情を100%捨てたジャッジができないのも事実だし、実際に不可解な誤審が起きてしまうのだから、やって損はないはずです。
何より、それが人としてあるべき姿だとも思います。たとえそういう下心があったとしても他人には実際の「さわやかに握手した」という行動の部分しか見えないし、行動を続けるうちに内面が良い方向に変わることもあります。卓球愛好者の私としては、トップ選手の方にはプレイ以外でも子供たちの模範となるような振る舞いをしてほしいと思うのです。
まとめ
今回の件については、日本卓球協会が国際卓球連盟に抗議文を提出し、ビデオ判定の導入を要望したそうです。今後、他のスポーツと同様に、卓球にもビデオ判定が普及していくことでしょう。
しかし、最終的な判断を人間の審判がしている限りは、そのような方々へのリスペクトっていうのはやっぱり必要なのではないでしょうか。
最終的にはAIが得点の読み上げとか含めて、やるようになるんですかね?なんかちょっと、味気ない気もするなあ。
※ちょっとタイトルが不適切だったかもしれない。「誤審を防ぐ」というよりは、「誤審による不利な状況を防ぐ」とでも言えましょうか。
※2020年1月追記
今後のITTFワールドツアーなどの主要な大会で、チャレンジシステム(TTR, Table Tennis Review)が導入されることが決定しました。
参考資料
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣 (幻冬舎文庫)
サッカー日本代表で長くキャプテンとして活躍した長谷部誠選手。特定の技術やフィジカルを評価される選手が多い中、彼を評価する言葉としてはメンタルマネジメント、リスクマネジメント、キャプテンシー、インテリジェンスといった知性的なものがよく似合う。それらの要素を武器に、代表に絶大な安心と安定をもたらした男の著書。心が整えば、誤審すらもきっと怖くない。