今回は初心者キラー・粒高ラバーに関する考察です。
対戦相手の独特なフォームと球質から、(私を含め)多くの人が苦手意識を持つこのラバー。ぐにょぐにょ曲がるツブが多様な変化を生み出すため、対処も一筋縄ではいきません。
この粒高ラバーを使ってどんな球を打つことができ、そのときのツブに何が起こっているのか。
ここでは、粒高ラバーで生み出される回転の種類を3つに分類し、それぞれの打球時にツブがどのようなリアクションを起こすのかを考えていきます。
前置き:ツブは同じ方向に倒すのが基本
ツブは同じ方向に倒れないと不安定
粒高ラバーを使う場合、打球の際に「ツブを同じ方向に倒す」という意識がないと、そもそも全く安定したプレイができません。
ツブが別々の方向に倒れると、それらが復元するときに別々の方向に力がかかり、球が思った方向に飛んでくれません。反逆者が紛れ込んだ大玉転がしのイメージです。
※この場合、人間がツブのイメージです。
人間でも、例えば進路についていろんな人にいろいろ言われりゃ、そりゃブレますわな。それと同じです。
ツブを同じ方向に倒す方法
ツブを同じ方向に倒すための方法は、いくつか考えられます。
- 相手の打球の回転・進行方向の力に頼る
- 自分のラケット角度・進行方向を調節する
いずれにしても、ラケットにかかる力のうち、斜め方向からかかる力を増やすことでツブが同じ方向に倒れやすくなります。垂直方向のフラット打ちが、最も不安定な打ち方です。
粒高ラバーから生み出される球質
粒高ラバーから生み出される球質は、大きく3種類に分かれます。
- ナックル系(回転の無効化)
- 回転を逆にして返す(回転の保存)
- 自分から回転をかける(回転の生成)
以下、それぞれの場合について図解していきます。
※それぞれの球質が生み出されるメカニズムについて、YouTubeで図解しました。1.と2.の順番が逆になっておりますので、ご注意ください。
1.ナックル系(回転の無効化)
ツブは柔らかいので強い回転を吸収して受け止める力はあるのですが、回転をかけ返す力がありません。
なので、強い回転に対して特にスイングをせずに打球した場合、その返球はナックル性の打球になって返ります。
イメージとしては、回転している地球儀を指で止めてはじき返すイメージです。
2.回転を逆にして返す(回転の保存)
次に、相手の回転を利用するタイプです。
打球の際のラケットの動きが球の回転に沿うような動きであれば、その回転量がある程度維持されつつ、対戦相手から見て回転が逆になって返球されます。
ここでは代表的な例として、以下の3つについて図解します。
【A】通常の上回転が下回転になって返る
【B】通常の下回転が上回転になって返る
【C】強い上回転(ドライブ)が強い下回転になって返る(=カットブロック)
※吹き出しの中の球の回転方向は、打球前のものです。
いずれの場合も、スイングの方向が球の回転に逆らっていないことが分かります。
イメージとしては、回転している地球儀に対して、指を使ってさらに回転を与えるイメージです。
3.自分から回転をかける(回転の生成)
最後に、自分から回転をかける場合。裏ソフトラバーほどの回転をかけることはできませんが、一定の回転量を生み出すことが可能です。
裏ソフトラバーと違うのは、球をラバーの表面で擦って回転をかけようとしてもかからないことです。下図のように、ツブを同じ方向に倒しつつ、滑らせるような意識が必要になります。
こうすることでツブを倒し、接触面積を増やします。接触面積と回転量の関係については、過去記事でふれました。
そしてスイングスピードを上げることにより、この倒れたツブがさらに引き延ばされるような感じになります。おそらく、これによって裏ソフトラバーでいう引きつれ効果が発生し、回転がかかるのではないかと思います。
スイングスピードが遅いと、倒れたツブが引き延ばされることなく元の状態に戻るため、1.のナックル系に近い打球になってしまうのでしょう。
まとめ
このように、粒高ラバーが自分にとっても相手にとっても難しいのは、スイングの速さや方向だけでなく、打球前の球の回転や球との接触時間・面積などによっても飛んでいく球の球質が変わってくるというところです。
そのため、ラリー中に処理すべき情報の量が増えます。自分の技術のことで手一杯になりがちな初心者にとっては、相手の動作もよく見ておかなければならないということで対応できなくなるのです。
しかし、上級者を目指す過程でそれら情報面の課題は繰り返し練習で克服できるため、速度が出せない粒高ラバーはだんだん不利になってきます。粒高プレイヤーはそれを補うべく、多彩な発想力や戦術でカバーしていく必要があります。
それが粒高ラバーの面白さ(裏ソフトユーザーから見たら、いやらしさ)。粒高ラバーの相手が苦手という人は、自分で試しに使ってみることで克服への糸口がつかめるかもしれません。