ここでは卓球の球の軌道がどのように決まるか、基本的な物理法則をふまえながら解説していきます。
飛んでいる球に作用する3つの力
飛んでいる球に対しては、地球上で卓球をしている限り、以下の3つの力がはたらきます。
- 重力
- 空気抵抗
- マグヌス効果(球に回転がかかっている場合)
以下、これらの力が及ぼす影響を見ていきましょう。
重力と空気抵抗の影響
まずは回転の影響(マグヌス効果)を除いた、重力と空気抵抗が球の軌道に及ぼす影響を図にしてみます。(球の発射角度と初速度は一定)
【B】重力あり・空気抵抗なし:空気抵抗がない分、遠くまで飛びます
【C】重力あり・空気抵抗あり:現実(地球上)の打球の軌道です
ちなみに、空気抵抗は球の速度の2乗に比例します。空気抵抗に関しては、以下の記事の中で詳しく紹介しています。
マグヌス効果の影響
次に、マグヌス効果の影響を考えます。
マグヌス効果(マグナス効果)とは
飛んでいる球に回転がかかっているときに作用する力で、進路を曲げる効果がある。
- 力の大きさ:球の回転量に比例し、球の速度の2乗に比例する。
- 力の方向:球の前面が回転している方向にかかる
テニスの法則 科学でゲームに強くなるより抜粋
↓マグヌス力がかかる方向についての動画です。
ここでは横回転はさておき、上回転(トップスピン)と下回転(バックスピン)による影響を図にしてみます。(球の発射角度と初速度は一定)
ドライブ(上回転)の打球が台に収まりやすく、カット(下回転)の打球は滞空時間が長くなる。この辺は、卓球(もしくはテニスなどの球技)をやったことのある方は直感的に理解できることと思います。
球の軌道を決める3つの要素
空中を飛んでいる球に作用する力の影響が分かったところで、今度は「球の打ち出し方」による影響を見ていきます。球のラケットとの衝突の仕方によって、以下の3つの要素が変動します。
- 球の回転量と方向
- 球の発射角度
- 球の初速度
球の回転量と方向の影響
これは先ほどのマグヌス効果の続きです。回転量が多ければ多いほど、マグヌス効果の影響が強くなり、軌道の変化が大きくなります。
相変わらず、球の発射角度と初速度は一定です。
球の発射角度の影響
球の発射角度が違えば、飛んで行く方向も変わってきます。(球の回転量と初速度は一定)
このとき、ある角度以下ではネットにかかってしまい、ある角度以上ではオーバーミスになってしまいます。この間の発射角度が許容範囲となります。
もちろん、この範囲は球の初速度や回転量によって変わってきます。
球の初速度の影響
球の初速度が速いほど遠くまで飛びます。
これはあえて図示する必要もないと思うので割愛します。
まとめ
まずはここまで、球の軌道に影響する基本的な要素をまとめました。
簡単に言うと、
自然にはたらく力
- 重力
- 空気抵抗
- マグヌス効果
自分でコントロールする要素
- 回転量
- 発射角度
- 初速度
ということになります。
ここでの知識をベースに、卓球における各打法の特性や打球の方向と安定性などについて見ていきたいと思います。
卓球の球の軌道の法則2~発射角度と初速度の関係~へ続きます。
参考図書
テニスの法則 科学でゲームに強くなる, Howard Brody[著], 常盤泰輔[訳], 丸善