私は日頃、中国式ペンラケットを使っていますが、先日、気まぐれでシェークハンドの試し打ちをしてみました。
そしたら何ということでしょう。裏面ドライブが苦手な私でも、チキータを含めてバックハンド系の技術が相手コートにバンバン入るではありませんか。
ほとんど練習したことのないシェークのバックハンド技術がこれほど入るのはどういうことか?と考えたところ、以下の3つの理由に行き着きました。
- ペンとシェークでは身体の使い方が同じでもラケット面の角度がやや異なる
- 特に裏面ドライブでは指の分だけ打球スポットが限定されて打ちにくい(握り方にもよるけど)
- シェークの方がシンプルに球に威力が出やすく、結果入りやすい
いろいろ理由が考えられる中で、今回は3つ目の「球の威力」の面について掘り下げてみます。
なぜ、ペンのドライブとシェークのドライブでは威力に差が出てしまうのか。これを考えていきたいと思います。
上の体験談はバックハンドドライブについてですが、以下の話はフォアハンドドライブについても当てはまると思います。
威力に違いが出る理由
1.重量の違い
一般的には、シェークハンドラケットの方が重くても振りやすいため、ラケットの重量を上げられる傾向にあります。これはテニスラケットなど、卓球ラケットよりもサイズや重量の大きい用具を扱うスポーツでペンホルダー式の握り方がないことからも明らかです。ペンホルダー式では、ラケットの重量を上げると手首などに負担がかかり、どうしても振りにくくなってきます。
そして高校物理の最も基本的な法則
力 = 質量 × 加速度
を見ても分かるとおり、力の大きさは質量に比例するので、ラケットの重量が大きい方が生み出せるパワーも大きくなります。枝切れで叩くよりも丸太で叩いた方が威力がデカイわけです。
2.力の伝わり方の違い
ひとつ目の話の「ペンホルダーの振りにくさ」とも少しかぶりますが、なぜ重量が上がるほど振りにくくなるかといえば、もともとペンホルダーの握り方が安定感のある握り方ではないからです。
下の写真では、それぞれのラケットの握りによって支えられる部分を表示しています。
【A】シェークハンド
【B1,B2】ペンホルダー
※写真はシェークハンドのグリップも含め、中国式ペンラケットを使用しております
シェークハンドの場合、グリップ部分を包むように固定しているので(図【A】)、ラケット面に垂直な方向の力(スマッシュ系)に対してもラケット面に平行な方向の力(ドライブ系)に対しても、その力を受け止めて跳ね返すことができます。
しかしペンの場合、極端に言えば、下図のようにバランスを取っているような状態です。
緑丸の部分は親指と人指し指で包み込むように握るので比較的固定されるのですが、赤丸の部分は支えているだけと言ってもいい状態です。
そのため、特にラケット面に平行な方向の力(ドライブ系)が加わると、赤丸の部分は基本的に支えているだけなので、この力をしっかり受け止めることができず、力が逃げてしまうような状態になってしまいます。
言葉だと難しいので、図を併記してみます。図もちょっと微妙ですが。
【C】シェーク:ラケットに平行な力がはたらいても、グリップ部分でしっかり受け止める
【D】ペン:ラケットに平行な力がはたらくと、グリップ部分で力が逃げやすい
ペンの場合、ラケット面に下向きの力がかかると、緑丸の固定部分が回転軸のようになり、グリップエンドに上向きの力がかかります。実際にラケットヘッドを指でつまんで、下方向に力を加えてみると実感できると思います。
理由のまとめ
ここではペンとシェークで威力に差が出てくる理由として、以下の2つを挙げました。
- ラケットの重量の違い
- 力の伝わり方(逃げやすさ)の違い
ペンホルダーでシェークハンドと同等の威力を出していくには、これらの課題を克服する必要があります。
対策
それではペンラケットでシェークに負けないバックハンドドライブ(裏面ドライブ)を打つにはどうしたらいいのかという話ですが、結論としては己(おのれ)を鍛え上げるしか方法はないのではないかと思います。
それ以外に対策がないというのは、まだ身体のできあがっていない小学生に対して、まずはシェークハンドを勧めることからも分かると思います。対策があるなら、別にペンでもいいわけです。ドライブをかけるためのラケット面の出しやすさという点では、裏面ドライブの方が有利な面もありますので。
上の参考記事では、球の真上近辺を擦るときには裏面ドライブの方が前腕への負担が少ないことを解説しています。
シェークラケットの方が重くできるからペンの裏面ドライブが不利になるというのであれば、重いラケットでも振り切れるように己を鍛える。もしくは、ラケットの重量の差を埋めるべく、パワーが出せるような身体の使い方を追求する。
グリップが弱くて力が逃げてしまうのであれば、打球のインパクトに負けないようにグリップを固定できるよう握力を鍛える。
いずれにしても上半身を中心に強靱な肉体が要求されるわけです。
まとめ
今回はペンとシェークのドライブ技術に絞り、その威力に差が出てくる理由について解説しました。
そして、ペンのドライブに威力を出すためには、それなりに身体を強くするしかないことにも言及しました。
ペンホルダーでも裏面にラバーを貼ることでシェークハンドと同じような振り方でバックハンドが打てるようになったとはいえ、ドライブ系の技術に関してはやっぱりシェークに分があると感じます。
逆にいえば、筋力的な課題を克服できるのであればペンラケットもまだまだ捨てたものではありません。
台上技術はペンの方がやりやすい(握りが安定していない=細かく動かせる余地がある)し、何よりペンの人口が減って希少価値が高くなれば、ペンに対して苦手意識を持つプレイヤーも増えるでしょう。左利きやカットマンが苦手な人が多いのと同じですね。
という話を、シェークに浮気してみようかなと思っている私が書いてみたのでした。