昨今の卓球界では、逆横回転サーブを出すときに「男子はYG、女子は巻き込み」のような傾向があります。
その理由として語られるのが、「YGサーブは振りが特殊で腕に負担がかかりやすいから、強靭な腕が必要」というもの。確かにこれは一理あります。
しかし、それだけが理由であれば、ゴリゴリのムキムキに鍛えている世界ランク上位の中国女子選手たちが使わないはずがありません。何か別の理由があるはずです。
今回はその理由について考えていきます。
結論は「身長による制限」
以前、女子選手に前陣速攻型が多い理由を考察しました。結論として、身長が低いと後陣でのバウンドの高い球に対してドライブで対応しにくい点を指摘しています。
今回も結論から言ってしまうと、「身長による制限」というものです。
あまり語られませんが、YGサーブは他のサーブと比較して、打点の高さに制限があります。ここではそれについて見ていきます。
↓ショート動画でまとめてみました。
他のサーブとの比較
それぞれのサーブの一般的なフォームについて、打点に着目して解説します。
【A】順横回転サーブ、巻き込みサーブ
【B】しゃがみ込みサーブ
【C】バックサーブ
【D】YGサーブ
【A】順横回転サーブ、巻き込みサーブ
図のように、テイクバックでラケットを高い位置に持ってきてもOK。そこから振り下ろす過程のどこで打球しても良いので、背が低くても使いやすい。
【B】しゃがみ込みサーブ
顔の高さで打球するのが自然なので、必然的にしゃがみ込むことになる。打球後の戻りを考えると、むしろ背が低い方が有利。
【C】バックサーブ
打点を上げるほど窮屈だが、ひじを上げれば顔の近くでの打球も不可能ではない。しかし、小学校低学年ぐらいの身長だと、バックサーブは順横系・巻き込み系に比べて、少し難しいかもしれない。
【D】YGサーブ
打点を上げるほど窮屈で、どんなに頑張って打点を上げようとしても胸のあたりが限界。
さらに、下記の参考記事で説明しているのですが、基本的には前傾姿勢をとった方がボールの底をとらえやすくなる(下回転を出しやすくなる)ため、さらに打点が下がってしまう。
なお、テイクバックでラケットを身体の内側に巻き込まないようにすれば、顔付近からの打球も可能といえば可能です。しょぼい図なので分かりにくいですが、下図のようなイメージ。
しかし、この場合はテイクバックが取れなくなる分、前腕の振りが生かせず通常のYGよりも回転量が落ちると考えられます。さらに、相手からスイングも見やすくなってしまうので、回転方向もごまかしにくくなります。
そうであればわざわざ窮屈な打ち方をしなくても、同じ逆横回転系である巻き込みサーブの方が利便性が高いだろうということです。
まとめ
ちょっと短い内容でしたが、この身長論でいくと比較的小柄な丹羽孝希選手がYGサーブを使わないのもうなずける気がします。
私も男子の平均を下回る身長167cmなのですが、たまにYGサーブの練習をすることがあります。しかし、良い感覚で打てた(切れた)ときほどネットにかかりやすいという印象があるんです。今回の話は、この体験がベースになっていたりします。
何かの参考になれば幸いです。