卓球の球の軌道の法則1~球に作用する力と制御できる要素~の続きです。
ここでは球の軌道を決める3つの要素のうちの1つ「球の発射角度の影響」について深堀りしていきます。
角度許容範囲のおさらい
前回登場した、角度許容範囲についてのおさらいです。
一定の回転量、一定の初速度で球を打ち出した場合、
- ぎりぎりネットを越える軌道
- ぎりぎり台に収まる軌道
この間の角度で球を打ち出せば、打球は相手コートに入る、というものです。
しかし、前回述べたとおり、球の軌道を決める要素の中には「発射角度」以外にも「初速度」と「回転量・方向」がありました。
そこで、今回はこのうちの「初速度」にクローズアップし、「角度許容範囲」と「球の初速度」の関係を見ていきましょう。
発射角度と初速度の関係
一般的には、発射角度と初速度には反比例の関係があります。
例えば、温泉卓球のようなフワッと浮いた球を打つのであれば、発射角にある程度のブレがあってもコートに収まってくれますが、スマッシュを仕掛ける場合にはシビアな角度調整が必要になります。
これをグラフにすると以下のような感じです。
縦軸は角度許容範囲。上に行くほど、冒頭の図の「角度許容範囲」の角度が大きくなります。
横軸は球の初速度。右に行くほど球のスピードが速い状態です。
各点【A】~【D】を図解すると、以下のような状況になります。
【B】:初速度が遅く、角度許容範囲が比較的広い
【C】:初速度が速く、角度許容範囲も小さい
【D】:初速度が速すぎて、全ての球がネット、もしくはオーバーする
もちろん、少し浮いた球であれば【D】のような状況はなくなり、全体的に角度許容範囲が大きくなります。
また、同じような状況でも回転による力を利用すれば入るようになるものもあります。
まとめ
今回の話は中級者・上級者にとっては当たり前の話だったかもしれませんが、当たり前の話をグラフで理論的に見るのは逆に新鮮だったのではないでしょうか。この手の話、テニスでは書籍で結構まとまっているのですが、卓球に関してはあまり見ない気がします。
球の発射角度の許容範囲が大きいということは、相手の打球の回転量などが読み切れなくても対応の余地が広がるということにもなります。
そこで安全に返球するのか、それともリスクを取って攻めるのか。状況に応じて、どちらも正解になり得ます。
少なくとも、初級者の方で「全球全力スマッシュ」のようなクセのある方は、このような視点で卓球を考えてみるのもいいかもしれません。
さて、ここで出てきたグラフの見方が分かったところで、次は上回転(トップスピン)・下回転(バックスピン)を考慮に入れたときの関係を見ていきたいと思います。
卓球の球の軌道の法則3~発射角度・初速度・回転量の関係~へ続きます。
参考図書
テニスの法則 科学でゲームに強くなる, Howard Brody[著], 常盤泰輔[訳], 丸善