前段階「1. そもそも回転の種類が分からない」では、以下のことを解説しました。
- 卓球の基本的なボールの回転について
- 回転を生み出すには摩擦力や弾性力が必要であること
今回は、それらの回転をどうすればかけることができるのか、具体的な状況をもとにいくつか考えていきます。
卓球の回転のかけ方が分からない人向けの解説
目次
- 【前提】回転をかけるために必要な力
- 例1:ラケット面を被せて水平にスイングした場合
- 例2:ラケットのスイング無しで相手のボールを受けた場合
- 例3:ラケット面が垂直な状態で水平にスイングした場合
- 回転の生成に影響する因子
- ラケット面の角度
- ラケットのスイングスピード
- ラバーの表面状態
- ラバーやスポンジの柔らかさ
- 各因子を考慮に入れたときの考え方
- ラケット面の角度を変化させたとき
- ラケットのスイングスピードを変化させたとき
- まとめ
【前提】回転をかけるために必要な力
卓球のボールに回転をかけるためには、ラケット面に対して水平方向に何らかの力がはたらいている必要があります。
いくつか例を挙げてみましょう。
例1:ラケット面を被せて水平にスイングした場合
いわゆる「ボールを薄くとらえる」場合です。この場合は、スイングスピードのうちの一部が回転をかけるための力になります(ピンク色の矢印)。
注:上の図ではベクトルの分解によって矢印を分解しています。よく分からない方はベクトルの合成と分解をご覧ください。
例2:ラケットのスイング無しで相手のボールを受けた場合
この場合は、ボールが回転している方向がそのままラケットの水平方向に及ぼす力になります。ラケットを動かさなくてもラバーの摩擦力・弾性力によって回転がかけ返されます。
逆に以下の場合に近づくほど、ボールに回転はかかりません。
例3:ラケット面が垂直な状態で水平にスイングした場合
この場合は、ラケットの水平方向にはたらく力がありません。よってボールに回転をかけることができません。
回転の生成に影響する因子
上記のように水平方向に何らかの力がはたらいた場合、それがボールとラバー表面の摩擦力を生み出したり、またラバー表面が水平方向に変形することによる弾性力を生み出したりします。そしてそれらの力がボールの回転を生み出しています。
ここではその回転の生成に影響する因子をひとつずつ見ていきましょう。
ラケット面の角度
ボールを薄くとらえた方が、同じスイングスピード(青い矢印)でもラケット面の水平方向へかかる力(ピンクの矢印)の割合が増します。その結果、回転もかけやすくなります。
ラケットのスイングスピード
同じラケット角度やスイング方向でも、ラケットのスイングスピード(青い矢印)が上がればラケット面の水平方向へ割り振られる力も増加します。その結果、回転もかけやすくなります。
ラバーの表面状態
ラバーの表面がツルツルしていると、摩擦力が発生しにくくなります。ラバーの表面は時間とともに酸化するなどして劣化することから、練習後は専用のクリーナーや保護フィルムなどで劣化を防ぐことが重要です。
また、練習頻度に応じて定期的なラバーの交換も必要になります。
ラバーやスポンジの柔らかさ
ラバーやスポンジが柔らかいほど、ボールがラバーに食い込みやすくなります。ボールがラバーに食い込みやすくなればラバーとの接触面積が増え、水平方向にかかった力を跳ね返す反発力も発生しやすくなります。そのため、回転がかかりやすくなります。
ただし、ラバーやスポンジは柔らかいほど、ボールのスピードが犠牲になりやすいという側面もあります。
各因子を考慮に入れたときの考え方
ラケット面の角度を変化させたとき
ボールを薄くとらえるほど、つまりラケット面の角度がボールの進む方向に対して水平になるほど、より多くの回転を生み出せる可能性はあります。
しかし、あまりにとらえ方が薄いと、ラバーの硬さによってはボールが十分に食い込んでくれず、逆に回転がかからない原因にもなりえます。
また、ラバー表面がツルツルの場合は、そもそもボールをラバーに食い込ませるための初期の摩擦すら発生せず、そのままボールが滑り落ちてしまう可能性もあります。
図のように、あまりにもとらえ方が薄いと、オレンジ色の矢印が小さくなりすぎてラバーが垂直方向に変形せず、かえって回転がかからなくなってしまう。
- ボールを薄くとらえることでより多くの回転を生み出せる
- とらえ方が薄すぎると摩擦力や弾性力が発生せず、打球に失敗することも
ラケットのスイングスピードを変化させたとき
回転の生成に影響する因子の項でも述べたとおり、ラケットのスイングスピードを上げる、つまりボールを強くとらえるほど回転量も上がります。
スイングスピードを上げることでピンク色の矢印だけでなくオレンジ色の矢印も大きくなります。つまり、よりラバーの変形を促すことができ、これがボールのスピードだけでなく回転量にもプラスの影響を与えます。
ただし、サーブの回転をかける際にはボールのスピードを抑えることも必要なので、通常のラリーと比べれば、やはりボールをより薄くとらえる意識が重要になります。
- 回転をかける際にスイングスピードを上げると、弾性力との相乗効果で回転量が増す
- しかしサーブの場合は飛び過ぎてしまうこともあり、やはりボールを薄くとらえる意識は重要
まとめ
今回は、卓球のボールに回転をかけるために必要な力と、その力を生み出す因子、そしてそれら因子の相互関係について解説してきました。ボールを薄くとらえることの重要性と、薄くとらえすぎることの弊害が何となく理解できたのではないかと思います。
もちろん、ボールに回転をかけられるようになるために最も重要なのは反復練習ですが、このような前提知識があるかないかで練習効率に差が出てくるはずですので、参考にしていただければと思います。
(センスでカバーできる人は別かもしれませんが)
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